地球の歴史46億年を1年に例えてみると、40億年前に生命が誕生したのは2月の中旬、カンブリア爆発が起きたのは11月ごろです。そして、人類が誕生したのは12月31日の大晦日の午後3時半ごろ、文明が生まれたのは年が明けるほんの1分前のことです。

 生物が長い歴史をかけて進化してきた過程を考えれば、人類の歴史はごく短い期間であり、その特徴を大きく変化させるような進化をとげるのは、まだまだ先の話だということがわかります。恐竜など多くの生物が地球環境の変化で絶滅していったように、人類も特徴を変化させる前に絶滅してしまう可能性もあるのです。

 しかし、近年のゲノム解析にみられるように、人類は遺伝子について詳細な知識を得、それを操作する技術も発見してきました。今後、人為的な遺伝子操作により、環境に適応して生存できる形質を持ったヒトが作り出され、人類が猛烈なスピードで進化していくかもしれません。ですが、そうなった時、それはもはやヒトと呼べるのかどうか。そして、そのような遺伝子操作は人類が踏み込んでも良い領域なのかどうか、科学者だけでなく人類全てによる議論が重ねられるべき問題だと思います。

 生物の進化をあらわした系統樹は、あたかも一本の大きな木のようです。我々人類は、この大木の細い枝先のほんの先端にいるのだということを忘れないようにしなければいけません。